e-na.lab:Chemistry

化学のまとめ

top>>e-na.lab>>物理化学>>酸塩基平衡>>滴定シミュレータ

滴定をシミュレートできます

使い方

1.溶液シミュレータ

"溶液を追加"ボタンを押すと、溶液のエディタが出てきます。 溶液の自己プロトリシス定数、加える酸や塩の量や種類を入力すると、その溶液の各イオンの濃度を計算します。 (ヒント1: アンモニアなどの塩基は共役酸を電荷の0でない酸として登録します。) (ヒント2: 水酸化物イオンは水として登録してあります。)

2.プリセットエディタ

溶液シミュレータにおいて利用可能な酸のプリセットの一覧です。 また、ユーザー定義のプリセットを登録できます。 この時、入力するイオン式は電荷を除いたものにしてください。また、式中の数字は下付き小文字になります。 (例: 硫酸水素イオン(HSO4)の場合は"HSO4"としてください。)

3.滴定

滴定操作のシミュレーションができます。 まずは滴定に使う溶液を溶液シミュレータで登録してください。 何かしらの酸を入力し(投入量は0でも良い)、"適応"ボタンを押すとその溶液のステータスの"invalid"が消えます。 次に、滴定する溶液を調製します。 項目の中から調製に使う溶液にチェックを付け、量を入力し、"分出/混合"ボタンを押します。 すると、新しい溶液が生成されるので、それを"滴定の対象"項目で選択し、適当な指示薬を選択したのち、 滴下する溶液にチェックを付け(この時調整に使った溶液のチェックを外すこと)、一度に滴下する量を入力し、 "滴下"ボタンを押します。滴下量は横に記録されます。

プリセット

電荷 :

溶液の混合

滴定対象: 指示薬: 0 mL
キャンバス非対応なようです。

説明

1.基本方針

平衡定数、プロトン収支、イオン収支の式(電荷保存則以外)からある$pH$に対する電荷の合計を計算する。これは現実の近傍で単調増加なので二分探査で$pH$を決定する。この$pH$から他のイオンの濃度を計算する。

2.立式

2-1.平衡定数

$n$種類の酸を考慮することにする。 $i$番目$^{†1}$の酸は$m_i$価であり、もっとも電離していない状態での電荷を$e_i$、その$j$番目$^{†1}$の酸解離定数を \[ K_{ij}:=\frac{[A^iH_{m_i-j-1}^{(j-e_i+1)-}\,\,][H^+]}{[A^iH_{m_i-j}^{(j-e_i)-}\,\,]}\quad(i\in[0,n-1],\,j\in[0,m_i-1]) \] とする。($\sum_{i=0}^{n-1}m_i$本の式)
また、溶媒の自己プロトリシス定数を、 \[K_{\mathrm{sol}}=[H^+][\mathrm{sol}^-]\] とする。

2-2.イオン収支

$m_i$価の各酸について、化学種は$m_i+1$個あるから、 各化学種の投入量を化学種Xの初期濃度を$[X]_0$として \[ c_{ij}:=[A^{i}H_{m_i-j}^{(j-e_i)-}\,\,]_0\quad(i\in[0,n],\,j\in[0,m_i])\\ c_i:=\sum_{j=0}^{m_i}c_{ij} \] とすると、イオン収支から、 \[ c_i=\sum_{j=0}^{m_i}[A^{i}H_{m_i-j}^{(j-e_i)-}\,\,] \] である。($n$本の式)

2-3.電荷保存則

初期時点での総電荷は、溶媒が中性だとして、 \[P:=\sum_{i=0}^{n-1}\sum_{j=0}^{m_i}(e_i-j)c_{ij}\] であり、現在のそれは \[P=\sum_{i=0}^{n-1}\sum_{j=0}^{m_i}(e_i-j)[A^{i}H_{m_i-j}^{(j-e_i)-}\,\,]+[H^+]-[\mathrm{sol}^-]\] である。

3.自由度

化学種は$i$番目の酸について$m_i+1$個あり、溶媒から生じるものを含めて合計で \[\sum_{i=0}^{n-1}(m_i+1)+2=\sum_{i=0}^{n-1}m_i+n+2\] あり、上の議論から式も同じ数あるので解析的に解ける。

4.計算

以下、[]内の電荷は省略し、"#"で表す。
(2-1.1)から \[ [A^iH_{m_i-j}^{\#}]=\frac{[H^+]}{K_{ij}}[A^iH_{m_i-(j+1)}^{\#}]=\cdots=\frac{[H^+]^{m_i-j}}{\prod_{k=j}^{m_i-1}K_{ik}}[{A^i}^{\#}]=\frac{\prod_{k=0}^{j-1}K_{ik}}{\prod_{k=0}^{m_i-1}K_{ik}}[H^+]^{m_i-j}[{A^i}^{\#}] \] 計算のため、 \[ A_{ij}:=\prod_{k=0}^{j-1}K_{ik}\\ B_{ij}:=[H^+]^{m_i-j}A_{ij}\\ M_i:=\frac{c_i}{\sum_{j=0}^{m_i}B_{ij}} \] とすると、 \[ [A^iH_{m_i-j}^{\#}]=\frac{B_{ij}}{B_{i\,m_i}}[{A^i}^{\#}] \] よって(2-2.3)から \[ c_i=\frac{[{A^i}^{\#}]}{B_{i\,m_i}}\sum_{j=0}^{m_i}B_{ij} \] したがって${[{A^i}^{\#}]}$から、 \[ [A^iH_{m_i-j}^{\#}]=M_iB_{ij} \] 結果的に、(2-3.2)は(2-1.2)も使って、 \[ \sum_{i=0}^{n-1}M_i\sum_{j=0}^{m_i-1}(e_i-j)B_{ij}+[H^+]-\frac{K_{\mathrm{sol}}}{[H^+]}-P=0 \] ここで$(左辺)=:f(-\log_{10}[H^+])$と置く。

5.近似

5-1.化学的意味

$f(x)>0$の時、実在の溶液に

5-2.二分探査

まず、$pH\in\mathbb R$より探査範囲が無限なので有界にする。
具体的には、適当に$d_0>0, pH_0$を選び \[ d := \frac{f(pH_0)}{|f(pH_0)|}d_0 \] とすると、 \[ \exists n\in\mathbb{N}\,s.t.\,f(pH_0+nd)f(pH+(n+1)d)<0 \] であり、この時$pH\in [pH_0+nd,\,pH_0+(n+1)d]$である。